Tuba2826a

八卦図鐔

銘 於三州西尾 国友正幸作

八角椀形、鉄鍛目地、砂張象嵌、角耳小肉
縦 75.8mm 横 76.1mm 重ね 3.4mm (切羽台) 3.3mm (耳)

保存刀装具鑑定書

 西尾における国友鐔は『正命』(明和頃)、『正幸』(安永~寛政頃)、『正重』(享和~文化頃)、『重貞』(天保頃)の各代である。『正命』、『正幸』はおいては『砂張象嵌』と呼ばれる流し込み象嵌の技法がみられる。

 この鍔は西尾国友二代 『正幸』の作。八角形の鉄鍛目地は椀形にかたちどられ、砂張象嵌で八卦図を配している。砂張象嵌とは銅と錫と亜鉛を加えたものを鉄地の鐔に流し込んだ象嵌で独自の作風を確立した。この技法は元来、火縄銃の銃身の象嵌技法を取り入れたものである。

 『正幸』は本職鉄砲師であり、鐔工としては作域の広い作者で多彩な作風を観る。妻は初代『正命』の娘、はじめ国友勇右衛門、のち国友勘五右衛門と改めた。享和元年六月十九日歿

江戸時代中期、安永~寛政頃(1772~00)

 八卦(はっけ)は古代中国から伝わる易における8つの基本図像で、陽爻と陰爻を示す算木の記号を三つ組み合わせて表される八つの象徴のこと。 「八卦」には、乾(天)・兌(沢)・離(火)・震(雷)・巽(風)・坎(水)・艮(山)・坤(地)の八種類がある。その中の二種を組み合わせることで自然界の諸現象をこの「八卦」で表すことができるとされている。

(乾)
(兌)
(離)
(震)
(巽)
(坎)
(艮)
(坤)