A73631(S3270)

薙刀直し刀 無銘 古三原

古刀 南北朝時代 (延文頃/1356~67) 備後
刃長74.3cm 反り1.4cm 元幅30.0mm 先幅22.9mm 元厚7.7m

特別保存刀剣鑑定書

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剣形:鎬造り、庵棟。薙刀直し打刀。寸延びて、身幅広く、鎬筋が高い。元先の幅差はさまに目立だたず、大峰に結ぶ。(刀身拡大写真
地鉄:杢目肌に板目交じえ、刃寄りは流れる肌を交え、総体に細かに肌立つ。地沸微塵について地景細やかに入り、淡く白け映りが立つ。
刃紋:中直刃を基調に、腰元を湾れ刃で焼きこみ、処々に節ごころがある。刃縁には小沸が厚く積もりバサける様があり、ここに小乱れ、鼠足が頗るよく働いて、金線や砂流しなどの沸筋や、刃縁のうちのけ、二重刃、ホツレる刃など豊かな働きが看取でき、匂い口明るく冴える。
帽子:よく沸付いて小乱れ交え、細い沸筋が刷毛目のように流れて焼詰めとなる。
茎:長巻き直し無銘。茎尻は切。鑢目切。目釘孔二個。
 備後国三原派は、鎌倉時代末期に興り、以降室町時代末期に至るまで繁栄している。鎌倉時代末期より南北朝時代にかけてのものを『古三原』と汎称しており、以降室町時代の作品を『三原』と呼称して分類している。同国は良質の鋼を産したことで高名で、かつ中央大社寺の荘園が多いために同派の作風には大和気質が窺われるのは畿内との交流によるものと推察されている。
 表題の作は薙刀直しの刀である。二尺四寸五分強と長寸を保持して身幅は広く、元先の幅差は目立たず、反り浅く付いて大峰に結んだ大柄な体躯を有して南北朝盛期の特徴をよく反映し、原姿を彷彿させる勇壮な姿をしている。鍛肌は杢目肌を主調に刃縁には流れ肌が交じり、淡く棒状の白け映りを魅せて古雅な様相を呈している。肌目は刃境を越えて刃中にいたり、ほつれ、金線、砂流し、沸筋、小足などの働きが複雑に絡み合ってここに小沸が厚く積もり明るく冴える。帽子の焼刃は小沸厚くからんだ小乱れが焼詰めとなるなど地刃の様相に大和伝の特徴が顕著である。これらの刃縁の繊細で古雅な様相は大きな乱れによって惑わされることのない魅力である。堂々とした姿形には迫力があり、刃縁にあわられた豊かな働きが味わい深い作品で、同派極めの優品の一口である。
猪の目透赤銅地金色絵二重はばき、白鞘入り