T60103(S2820)

刀 銘 越後守包貞

新刀 江戸時代前期(延宝頃・約330年前) 摂津
刃長71.0cm 反り1.8cm 元幅31.7mm 元厚7.4mm 先幅20.2mm

特別保存刀剣

参考品

 

剣形:鎬造り、庵棟。元の身幅広く、腰に踏張りがあり、反りが美しく付き、中峰に結ぶ。表裏に丸留の棒樋の彫り物がある。
鍛肌:板目肌よく練れて杢目交じり、精美な肌合いをしており刃寄りに流れる肌目がある。地に小沸よく付いて地映りが発つ。
刃紋:総体沸強く付いた湾れ乱れに互の目足頗る頻繁に入り、刃中は厚く匂いで満ちて明るく冴える。刃縁は二重刃を呈してさながら山に雲海の如く湯走り状態となる。
中心:茎生ぶ。鑢目は大筋違い。茎尻は刃上がりの入山形。目釘孔壱個。掃表に越後守包貞と銘がある。
帽子:二重刃ごころに先強く掃きかける。
越後守包貞、後の坂倉言之進照包は大和手掻系の大阪鍛冶で、初代包貞に師事し、長じてその娘婿となり、養父である初代包貞没後の寛文五年から延宝七年までは、初代の子・岩松が幼少だったため、二代「越後守包貞」を冠した。岩松が成人した後はこれに越後守を譲り、自身は隠居して「坂倉言之進照包」と改め以降貞享元年まで終生を「照包」銘で通した。(晩年の天和四年に越後守を受領し、「坂倉越後守照包」と銘した作がある)。
この刀は反りがやや高めに付いた絢爛な刀身に美しく詰んだ小板目肌に杢目を交え、刃寄りに板目流れごころに練り鍛えられて地沸を厚く敷き、沸映状態となる。刃文は総じて刃沸つぶらで美しくかつ、烈しくキラキラと輝き覇気に富んだもので五つに湾れて二重刃ごころに湯走りが雲状に棚引く。刃縁の湾れ付近は明るい小沸が降り積り、ここに太い金線や食違いごころの沸筋がからんでいる。刃中には清浄な春霞みの如く匂が充満し刃色が頗る明るく、ここに互の目の足が精緻に架かる。帽子は二重刃ごころに先は掃きかける。乱刃を得意とする同工の作中でも、佩裏に殊に変化が豊かで所詮「児手柏調」となった手掻包永に強く私淑した作であり、大阪新刀の上々作の美点が余すところなく表出された名作。大業物。
金着せ一重はばき、白鞘入