N11058(W8237)

脇指 銘 越前守助廣

新刀(明歴三年~万治/1657-1660頃) 摂津
刃長44.8cm 反り0.8cm 元幅32.7mm 先幅 22.5mm 元重7.0mm

参考品

津田越前守助廣は寛永十四年摂州打出村に生まれた。初代そぼろ助廣の門に学び、師の歿後二代目を継いだ。養子に迎えられたとの説もある。
明歴三年に越前守を受領している。寛文七年には大阪城代青山因幡守宗俊に召抱えられ、鎌田魚妙はその著書「新刀弁疑」で「絶世の名人」と称し、最上作を創出し至高の賞賛の言葉をもって創作に励んだ。天和二年、惜年四十六歳で歿している。彼の作域は当世より江戸時代を通じてさらには現在まで一世を風靡しその作域を規範として多くの刀工に影響を与えた。本脇指は助広の二十代前半の初期の作で越前守受領直後と推測できる。地金は小板目が密に詰んで繊細かつ均一なる地沸が平地に一面について刃縁には小沸が零れんばかりに厚く付いて刃先に向かって煙り込み頗る明るくかつ精緻な焼刃を遺憾なく発揮している。
表の中程には不動明王の凡字の彫り物がある。さらには不動明王の化神である草の倶梨伽羅に「力」を顕す龍が絡みこれを呑み込まんとする。腰元には蓮台の彫り物がある。
裏には中程上部に宝珠、そして二筋樋の護摩箸(不動明王の化身・密教具)の彫り物がある。
本一口は新刀銘字図鑑(藤代義雄、重要無形文化財の藤代松雄氏共著)に所載されており越前守助廣の初期を代表する優品であり、歴代に愛蔵された完在の脇指である。

(守護神である不動明王は右手の剣によって一如の障害を慧悩を打ち砕き、左手の頬索で人々の平和を末長く守るとされる。)