S62396(T3701)

短刀 銘 竜義 平成二年春

現代刀 (平成二年/1990)静岡県
刃長 20.7cm 無反り 元幅 24.1mm 元重 9.1mm

 

剣形:平造り、庵棟。身幅尋常に重ね頗る厚くついた無反りの短刀。ふくら枯れて先重ねも厚くついた堅強な鎧通しの体躯。はばきを含む刀身重量は228㌘あり、手持ち重厚。(刀身拡大写真
彫物:表裏には茎に掻き流す棒樋の彫物がある
鍛肌:板目肌練れて総体に柾がかり、太い地景入り地沸ついて鉄色冴える強靭な鍛肌。
刃紋:焼き出しを小模様に、広狭ある沸本位の覇気ある湾れ乱れ。刃縁には打ちのけ頻りとかかり、二重刃、三重刃をまじえて沸厚くついて、ここに稲妻や金線交え、砂流し頻りと流れて刃縁明るく冴える。刃中は匂い深く充満し、小互の目の太い沸足が明るい閃光を放つ。
帽子:強く乱れ込んで強く掃きかけて地蔵風に小丸に尖る。
中心:生ぶ。刃上がり栗尻に結ぶ。鑢目は大筋違に化粧鑢、棟小肉つきここにも大筋違に化粧の鑢目がある。茎孔壱個。佩表の目釘孔下方に大振りの二字銘『竜義』、裏には『平成二年春』の制作年紀が刻されている。

 竜義刀匠は本名を『榎本栄一郎』、昭和二十六年十月三十一日、静岡県三島市大宮町三丁目15-21、名匠『月山貞勝』に学んだ無鑑査刀工『湧水心貞吉』の長子として生まれた。次弟の『榎本貞人』、本名『榎本栄七朗』とともに近代を代表する刀鍛治である。
 同工『榎本栄一郎』氏は佐藤寒山博士により初銘『貞義』を命名したが、父『貞吉』と同音の為に、結婚を機に『竜義』に改めた。
 父『貞吉』に師事して技を修め、昭和五十年新作刀展覧会に出品以降、躍動する地景や金筋、光彩を放つ強い沸の美に魅せられて相州伝の優品を念頭に鎚を振るい、数々の入選・受賞を果たした優工。
 この短刀は重ねの頗る厚い、ふくら枯れごころの刺突に長じた鎧通しの造り込み。相州伝の深淵に迫らんとする左文字写しの力作。地鉄は柾目肌の太い地景が脈々はいって鉄色明るく冴え、湾れを主調とした焼刃はしだいに高く焼刃を配して沸はさらになり、強く・厚く刃縁にからみ金線、稲妻、砂流しが幾重にもかかる。帽子の焼刃はさらに強く・明るく沸づいて一枚風となり火炎風の沸筋が幾重にも放射している。
 栗尻に結ぶ茎は制作時の白銀色に輝き、精細な化粧鑢には『竜義』の二字銘、および『平成二年春』の同氏、三十八歳の制作年紀が刻されている。
銀地一重はばき、白鞘入