G4242(S1515)

小太刀 銘 盛光 附)錫梨子地吉野山桜金銀切金高蒔絵鞘糸巻太刀拵

古刀 室町時代初期(応永頃/1394~) 備前
刃長 60.1cm 反り 1.8cm 元幅 25.2mm 先幅 15.3mm 元重 5.0mm

特別保存刀剣鑑定書

附)錫梨子地吉野山桜金銀切金高蒔絵鞘糸巻太刀拵

剣形:鎬造り、庵棟。身幅・重ねともに頃合いに、腰反り深くつき先反りをくわえて中峰に結ぶ優雅な小太刀。
彫物:鎬地表裏にははばき上で丸留の樋先の上がった棒樋の彫物がある。(刀身拡大写真
鍛肌:杢目に板目交えよく錬れて潤い麗しい鍛肌には鮮明な乱れ映りがたつ。
刃紋:湾れに腰開きの互の目に丁子、逆がかった蛙子丁子を交えて艶やか。横手下物打ちあたりは乱れが鎮まり小丁字となる。
帽子:乱れ込んで先僅かに尖り気味となり浅く返る。
中心:やや短めな生ぶ茎にも反りが付いて腰反が顕著、先栗尻に結ぶ。鑢目勝手下がり、棟に小肉ついてここにも勝手下がりの鑢目がある。目くぎ穴三個、中頃の鎬地寄りには太刀銘で二字『盛光』と刻されている。

 室町時代初期、応永年間になると長船の地には格調高い作風を示す刀工達があらわれた。 『修理亮』を冠する二代『盛光』は、当代随一の名匠で技量もっとも優れる刀匠として賞揚された。次弟とも云われる『康光』、二代『師光』とともに『應永備前』もしくは『備前三光』と称されてあまたの名品を輩出した中古刀上々作の優工である。太刀 銘 『備州長船盛光 応永廿三年十二月日』をはじめ三口の重要文化財および太刀一口の重要美術品がある。

 この品位ある『盛光』の小太刀は朝廷からの特別な需であろう。六百数十年に及ぶ元姿の体躯を留め、板目肌に『応永杢』と呼ばれる美麗な肌目を交えた鍛肌は精美に錬れて潤う。匂口頗る明るく清涼な百花繚乱の丁子乱れの刃縁より地斑調の乱れ映りを伴い霞む古雅な地鉄を呈する福岡一文字に見紛う入念作である。

 高位な公家衆の差料に相応しい出来頗る傑出した吉野山桜図糸巻太刀拵が附された内外完存の優品である。

附)錫梨子地吉野山桜金銀切金高蒔絵鞘糸巻太刀拵拵全体写真刀装具各部写真
  • 総金具(兜金、猿手、縁、足金物、柏葉、石突):桜花文散図、赤銅魚子地、高彫、金色絵、無銘
  • 目貫:桜花文三双図、赤銅地、容彫、金色絵
  • 鐔:葵形、赤銅魚子地、金色絵耳、大切羽 二枚 桜花文散図、赤銅魚子地、高彫、金色絵、四方猪目透、無銘
  • 鞘:錫梨子地吉野山桜金銀切金高蒔絵
  • 柄:錦包着 古代紫糸平菱巻
時代金着太刀はばき、白鞘付属
参考資料:長船町『長船町史』大塚工藝社、平成十年
初代の『盛光』は『倫光』子、『兼光』の孫にあたり兄には『師光』がいる。初代盛光の現存作は稀有である