古金工とは、室町時代の制作で銘を残さなかった金工の総称。古金工の刀装具は秋草図を多様し、秋虫などの追加の画題を加えることなく、本鐔のように単一の図柄を採用することが多い。
この鐔は満開に咲き誇る菊花をより厚手に鋤出高彫をして濃厚な金色絵を施して変化を持たせ、菊葉に射す陽光の輝き部分には薄い金色絵を充てて画題に奥行きを感じさせる。中低の切羽台から漆黒の赤銅地にかけて肉取りを厚くして縄目状の金覆輪を廻して装着時を美観をさらに演出している。
僅かに色絵の剥がれた部位から、厚手の金を袋着せする所謂『うっとり色絵』の中世の手法をみることができる。
室町時代至桃山時代に制作された古雅な金工鐔で保存状態も良好。