Tuba2837a

竹垣小禽図鐔

無銘 奈良派

撫角形、真鍮石目地、毛彫、刻印打込、高彫象嵌色絵、赤銅覆輪

縦 71.4cm 横 66.5mm 重ね 5.2mm(耳) 4.8mm(切羽台)

保存刀装具鑑定書・特別貴重刀装具認定書

 奈良派は後藤家、横谷派と列び金工界の三代流派の一角を占めた。同派は自由奔放で斬新な画題を真鍮などの変わり素材を用いて写実的な彫金を施した町彫師としての名声を享受した。

 精巧な高肉彫りの手法を用いて、竹垣に停まる小猛禽の趾には山銅色絵を、後遠方には笹竹を赤銅・山銅・金の高彫象嵌色絵で遠近感を演出。寒さで羽を膨らませているのであろうか、可愛らしい小禽の背後には秋草を毛彫・打刻して一部は切羽台まで及んでいる。花の柱頭には銀を、朝露には金の玉象嵌を充てる。裏は邸内の景色であろうか、箱庭に植えた笹竹を片切彫で刻して金・山銅の玉象嵌で朝露を顕している。石目地の真鍮地は絶妙に色揚げされて静寂な空間を演出。写実絵画的な画題を至高の技で昇華した奈良派の名鐔。

江戸時代後期