日本刀の取り扱いと保存-3

刀剣の取り扱い方・手入れと保存法_3

打粉をかけたものを拭う
10. 油塗紙(水で洗ったネルでもよい)を幅3センチ、長さ6センチほどに適当にたたみ、これに新しい油を染み込ませ、それが終わったら再び刀を左手に持ち替え、右手で油紙を刀の棟のほうからあて、拭いと同様な要領で静かに丁寧に油を塗ります。油のつかない部分のないように確かめながら、時には2度3度繰り返します。拭う時も同様ですが、最新に扱うことです。また、油を染み込ませる時、あまり少なすぎても困りますが、多すぎると油が流れて、鞘などを損ずる恐れがあります。薄くむらなく、平らに塗ることを心がけてください。
11. 油のついた手で、軽く茎にも油を塗っておくこともよいことです。但しこれも多くべたつくほどにやることは禁物です。
12. はばきをかけて一応鞘に納め、柄の目釘をぬき、さらに刀を右手に持ち、立てるようにして左手に柄を持って、茎を柄に入れます。刀を左手に持ったまま、ピタリと入るように、柄頭を右の掌で下からポンと軽く打ちます。よく納まったら目釘を打ち、刀を右手に持ちかえて左手で鞘を握って前述(刀の抜き方、納め方)のようにして刀を鞘に納めます。言うまでもありませんが、拵のついている場合は、刀を鞘に納めたまま、切羽、鍔、再度切羽の順に鍔をかけ、それから刀を抜いて柄に入れ、目釘を打って鞘に納めます。
13. 槍や薙刀等の取り扱い方・手入れ法も同様でありますが、槍は扱いを特に注意しないとよく怪我をします。剣(両刃のもの)も同様です。
なお、日本刀は十数種類の砥石によって微細に研磨されているため、拭い紙や油紙に埃やごみが付いていると、ヒケ・疵の原因になりますので、手入れ道具は常に清潔に保管します。
油を塗り、茎を柄に入れる
4. 保存法
刀剣類を保存するには、錆させないこと、また疵などをつけないことです。そのためには次の事柄に注意する必要があります。
1. 常によく手入れをして油が乾かないように注意することが必要ですが、如何に注意しても錆びることがあります。これは多くの場合、「鞘当り」と呼ばれ、刀身が鞘の部分に接触しているためです。これは鞘が悪いので、鞘師に相談して直さねばなりません。また古い鞘の場合は、鞘の内部に錆やよごれが残っていて、そこからまた錆の出ることもあります。この場合は、鞘を新調しなければなりません。
2. 古い拵に入れておくと、とかく錆びが出やすいものです。元来、拵はよそ行きの着物で、白鞘は普段着なのです。それで昔は白鞘を「休め鞘」や「油鞘」と申しました。平素は普段着を着せておくことが理想です。白鞘は錆が出た場合は、直ちに割って中を掃除することが出来ます。白鞘は続飯(そくい)といってご飯粒をねった糊で付けるもので、セメダインなどのような接着剤を用いることは禁物です。
3. 万一、刀が錆びた場合は、素人手入れなどはせずに、研師に相談することです。角べらや文銭などで錆の部分をこするなどのやり方は、研ぐ場合にかえって手数をかけることになり、刀剣を損ずることになります。病気にかかったら信用ある医者、刀剣が錆びたら信用ある研師ということを常に忘れないようにしましょう。
刀を納める
4. 研ぎあげた直後は錆び易いものです。半年くらいの間は特に注意して一ヶ月に一度くらいは油をひきかえましょう。
5. 古い研ぎの刀は普通、そう簡単には錆びないものですが、春秋二度くらいは手入れをしたいものです。
6. 刀剣を保存する場合は立てかけておくことは本来好ましくありません。これは先の方に油が流れて溜まるからです。出来れば湿気の少ない場所に横にしておきたいものです。桐の着物箪笥などに入れておけば理想的ですが、この際は樟脳やナフタリンは避けなければなりません。これは刀剣に錆がでる原因になります。
7.刀剣はなるべく湿気の少ないところに保管されるのが理想的ですが、逆に拵は余り乾燥したところは適しませんので、保管場所をよく吟味することです。