A77641(S1899) 刀 銘 備前国住長船祐定作 天正九年八月吉日
附)金梨子地塗鞘打刀拵
保存刀剣
古刀 室町時代末期 (天正九年/1581) 備前
刃長69.3cm 反り1.8cm 元幅28.9mm 先幅19.5mm 元厚6.8mm
剣形:鎬造り、やや低い庵棟。一寸(3a)程の区送り。鎬筋が高く棟に向かい肉を削ぐ。腰反りに先反りが加わり元先の幅差頃合いについて中峰延びる。(刀身拡大写真
鍛肌:板目肌処々流れ肌を交じえてやや肌立つ。湯走り状の地沸が地斑調にいて乱れ映りがたつ。
刃紋:匂口しまりごころの焼刃は湾れに互の目乱れ、複式互の目、小丁子や尖り刃を交えて起伏が目立ち、処々跳び焼きを交える。刃中は足・葉賑やかに沸匂の闊達な働きがある。
帽子:乱れ込んで表は大丸。裏は同じく乱れ込んで中丸に返る。
茎:生ぶ、一寸程の区送り。目釘孔弐個。茎にも僅かに反りがある。鑢目は勝手下がり、棟肉平で同じく勝手下がりの鑢目がある。栗尻張る。佩表の第二目釘孔横鎬地には『備前国住長船祐定作』の長銘、裏には『天正九年八月吉日』の制作年紀がある。
 長船祐定の名は、明応頃(1492〜)の『彦兵衛尉』にはじまり『彦左衛門尉』から『与三左衛門尉』へと継承され、所謂『永正備前』と呼称される全盛期を迎えた。天文後年以降の祐定は『源兵衛尉』をはじめとして『次郎九郎』や『彦左衛門尉』を冠する祐定がおり、『末備前』と呼ばれる室町末期の備前鍛冶を代表する名流として知られている。
 同時代長船の作品中、祐定は乱刃の作を得意としているが、複式の互の目や湾れに互の目交じりや皆焼など、新興勢力の豪族や戦国大名の配下で婆娑羅の気風に応じた様々な刃文を熟すのも特徴である。
 この刀は鎬高く棟に向かって肉を削いだ強靭な肉置きをしている。さらには腰反りに先反りがつく体躯は素早い抜刀を念頭に置く実利を念頭に制作された打刀様式は室町時代末期打刀の典型である。
 祐定が創始した匂い出来湾れ刃に複式の互の目を配して、板目肌は所々流れる肌を交えてやや肌立つところがある。細かな地沸ついて乱れ映りが鮮明にたつ。刃中は足・葉が小模様に入るなど、同工の作中のうち沸匂の闊達な所謂『動』を呈して業物としての貫禄がある。
 茎仕立ては丁寧で保存状態が良い。本作は俗名こそないものの、神妙な鏨運びの銘文は入念作の証といえよう。名のある戦国大名に仕える尚武臣下の佩刀にふさわしいもので、同工の優れた美意識と技量をいまの世に伝えている。

附)金梨子地塗鞘打刀拵(拵全体写真刀装具拡大写真
  • 縁頭:獅子図、鉄磨地、赤銅据文象嵌、金色絵、無銘
  • 目貫:葵紋三双図、赤銅容彫、金色絵
  • 鐔:笹竹獅子図、鉄槌目地、鋤彫、金象眼、赤銅据文、無銘
  • 柄:白鮫着金茶色常組糸諸撮菱巻
鍍金銅はばき、白鞘入り
参考文献 : 『長船町史 刀剣編図録』 長船町 平成十年
 
刀 銘 備前国住長船祐定作 天正九年八月吉日
刀 銘 備前国住長船祐定作 天正九年八月吉日
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