A793(S1513)

刀 銘 長宗入道作

新刀 江戸時代前期(延宝頃/1673~)武州
刃長 75.2cm 反り 1.5cm 元幅 29.2mm 先幅 18.5mm 元重 7.9mm

特別保存刀剣鑑定書

剣形: 重ね重厚に真の三つ棟に仕立て、身幅尋常に鎬筋張り、やや腰元で頃合いの反りがついて中峰に結ぶ。(刀身拡大写真) 鍛肌:柾目肌が密に詰んで細かな地沸が肌目に沿って流れて潤いのある古調で美しい鍛肌。 刃文:直刃を基調に小互の目や喰い違いを交えて浅く揺れ、刃縁は新雪のごとく小沸が深く降り積もり明るい煌めき、刃中は匂が深く充満して蒼く冴える。 帽子:焼刃高くやや掃き掛けごころに先中丸に返る。 茎:生ぶ。茎長く僅かに反りが付く。茎尻にかけて細く薄く仕立てる。目釘孔二個(茎尻は控え孔)。刃上がり栗尻に結ぶ。勝手下がりの鑢目、棟小肉ついてここには大筋違の鑢目がある。佩裏の平地には太刀銘で細鏨で『長宗入道作』の五字銘が実直に刻されている。  『長宗(ながむね)』は同音異字の『長旨』同人とされ、初め『昌齋(しょうさい)』と号し入道後は同音の『庄齋』に転じたという。徳川家古参の重臣、伊豆市原領主『阿部伊予守正勝』に仕えた『小笠原藤九郎』の子で名を『小笠原左京』という。武士でありながら一念発起して阿部家の禄を辞し、江戸下谷池之端に住してはじめ轡・鎧鍛冶となり刀工に転じている。大和伝を家伝とし寛文から天和にかけての年紀作がある。新刀『上々作』に列し、刃味のよさを誇る『業物』の作者としても高名な寡作の優工である。  この刀は頃合いの反りがついて均整が採れ操作性に優れた体躯をしている。長い柄木を薄く仕立てるべく茎形状は先細く薄く仕立てられ、討ち合いへの備えを念頭に茎尻には控え目釘孔が穿かれている。  同工は太刀銘に切ることが知られ、本作は入道銘が刻されていることから家督を二代の『長旨』に譲り、自身は同音異字の『長宗』に転じているのであろう。大和古伝を彷彿とさせる古雅な作風を魅せる円熟期の作刀で同工の優れた技倆が発揮され、腕に覚えのある武士の蔵刀であったことが首肯できる。
金着二重はばき、白鞘付属
参考文献:
石井昌國・本間薫山『日本刀銘鑑』雄山閣、昭和五十年
藤代義雄『日本刀工辞典・新刀篇』藤代商店、昭和四十九年