Tuba8189a

秋草に虫図大小鐔

無銘 美濃 後藤

竪丸形、赤銅魚子地、高彫象嵌、金色絵、両櫃孔、角耳小肉
(大)縦 78.4mm 横 70.9mm 重ね 3.6mm (切羽台) 6.5mm (耳)

(小)縦 75.0mm 横 68.3mm 重ね 3.0mm (切羽台) 6.7mm (耳)

保存刀装具鑑定書

 美濃鐔は厚い赤銅地に秋草模様を丁寧な垂直工法で深掘りし、これに良質の色絵象嵌工法を用いた高級金工鐔。美濃国は上方に近く、朝廷公家の庄園が多くあったことから盛んに交流があった。京都の太刀金具師達は南北朝の戦渦に巻き込まれて避難を余儀なくされて美濃赤坂(現在の大垣市)辺りに移住して美濃金工の基礎を築いたという。

 後藤祐乗は美濃国で永禄十二年(1440)に生まれ、のちに足利義政に仕えて『美濃彫』の技法を元に『家彫』を完成させた名人。

 この鐔は室町時代に刀匠や甲冑師が製作した鉄地に透彫の技法から脱却して、太刀金具師が用いた赤銅地に秋草・秋虫を垂直に深く掘り下げる力強い高肉彫の手法を用いている。中低の切羽台より耳にかけて次第に厚みを増し金色絵は耳にまでおよぶ格調の高い大小鐔。