T221689(S828)

刀 銘 行光

古刀 室町時代中期 (文明頃/1469~) 加賀
刃長 70.0cm 反り 2.5cm 元幅 30.9mm 先幅19.5mm 元厚 6.5mm

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藤代松雄鑑定書
得能一男鑑定証

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剣形:鎬造り、庵棟。寸延びて、元身幅広く元先の幅差さまに開かず大峰に結ぶ。腰反り深くつき先反りを加えた太刀姿。鎬筋高く棟に向かって削いだ実利を念頭に於いた強固な体躯。(刀身全体写真鍛肌:地鉄は黒味を帯びた板目肌を主調に杢目肌流れて肌立って白く滓だち、総体に白け映りが立ち処々に澄肌が現れている。刃文:沸本位の互の目・小丁子・尖り刃を交えて跳び焼きかかり、箱がかった複式の互の目を形成する。叢沸や一分沸崩れて跳び焼きかかる賑やかな大乱れ。刃中は匂い深く刃縁は粗沸ついて処々金筋入り、砂流しかるなど豊かな沸匂の働きがある。棟には湯走りごころの棟焼が看取できる。帽子:表裏ともに焼刃高く、強く乱れ込み、沸崩れて表裏の焼刃異なって一枚風となり、棟に深く焼き下げる。
中心:生ぶ。茎尻は棟上りの栗尻形。茎にも反りがあり大きめな目釘孔一個。ごく浅い勝手下がりの鑢目に棟肉豊かに付いてここには大筋違いの鑢目がある。目釘穴上平地には『行光』の二字銘がある。

 南北朝時代の加賀国には、山城国より『来国俊』の門人である『藤島友重』が来住し、また『則重』の高弟『真景』が隣国越中より加賀に来住すると活況を呈するようになった。
 表題の『行光』は『藤島友重』の門人で初代は康正頃(1455~)という。山城伝の京反りの太刀造りの体躯に相伝備前を加味した互の目丁子乱れの刃文を焼いて見応え十分。以降、室町時代を通じて五代まで続くという。
 この刀は一見して姿のよい腰反り深くついた太刀姿をしている。元幅広く踏ん張りがありやや下方に大きく穿かれた太刀様式の目釘孔は室町時代中期の様式をしている。備前、美濃、相州の三伝法を加味した作柄は野趣に富んだ板目鍛えの地鉄に頗る賑やかな刃文を焼成しており、北国鍛冶達の繁栄と確かな技倆を今に伝えている。
 茎の錆味良好に古雅な二字銘『行光』の鏨枕は凛として立ち、ごく浅い勝手下がりの鑢目鮮明に今に遺した藤島行光の優品である。
金着せ垣根鑢一重はばき、白鞘入
参考文献:
本間薫山・石井昌國『日本刀銘鑑』雄山閣、昭和五十年