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剣形:平造り、三ツ棟、無反り。寸がのびて身幅は広く、重ねが厚いふくらの付いた短刀。刃棟区ともに深く生ぶ刃が残るどっしり(221グラム・はばき除く)した体躯をしている。(刀身拡大写真)
鍛肌:綾杉肌よく練れて明瞭な肌目を呈する。地沸ついて綾杉肌目に沿って太い地景が深遠より湧き出した美しい肌合いとなる。
刃紋:広直刃を基調に僅かに湾れ、小互の目、小乱れを交え、刃縁に小沸が厚く積もり、ここに打ちのけ状態の錵筋や釣針状の金筋、砂流しなどが頻りと絡むなど、平地の綾杉状の地景に呼応する豊かな働きがあり、刃中匂い充満して明るく冴える。
帽子:太い錵筋は火炎風に突き上げて小丸に返る。
茎:生ぶ、目釘孔一個。茎尻は栗尻形。鑢目は大筋違いに化粧。棟は小肉付き、大筋違に化粧の鑢目がある。表に『湧水子貞吉』裏には『昭和二二十五年正月日 山本 昇 取持之』の年紀と所持名がある。
榎本貞吉の短刀である。号を湧水子、本名を榎本吉市、明治41年1月22日(1909)徳島県生まれ。昭和3年(1928)に大阪の月山貞勝に師事する。昭和18年(1943)に静岡県三島市大宮町三丁目15-21に移住した。太平洋戦争後には数多くの入選を経て、昭和41年3月15日作刀認可。昭和56年(1891)より無鑑査待遇となり、平成8年(1996)に無鑑査となった。(系統:水心子正秀→月山貞吉→月山貞一→月山貞勝→湧水子貞吉)
月山貞勝門下では人間国宝の月山貞一、高橋貞次と並ぶ名手として知られ、殊に鍛えの名人として評価が高い。湧水子貞吉は師である月山貞勝の綾杉肌を継承したことでよく知られ、本作の如く美しい綾杉伝に優れた作品があり、保昌貞吉の柾目肌や相州伝に私淑した作品も慧眼する。月山一門の特徴である秀逸な仕立ての茎をしていることも好ましい。平成12年(2000)没 享年91。
金着せはばき(はばきには補修痕と金着せ部分に破れた箇所があります)、新規上研ぎ、新規白鞘入り。
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