S3682(S1998) 刀 無銘 氏吉(海部) 附)黒蝋色塗鞘打刀拵 |
保存刀剣 | |
古刀 室町時代末期(天正頃/1573~)阿波 刃長 69.2cm 反り 1.3cm 元幅 31.5mm 先幅 21.5mm 元重5.9mm |
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剣形:鎬造り、庵棟、やや浅めの反りがつき、元身幅広く元先の幅差さまに開かずに大峰に結ぶ。重ね尋常に鎬筋高く棟に向かって肉置きを削ぐ強靭な造り込みをしている。(刀身全体写真) 鍛肌:柾目肌流れて板目を交え、腰元は綾杉風の肌目となる。総体によく練れて潤いがあり、地沸ついいてやや白けごころの映りがたつ。 刃紋:浅く湾れて処々に互の目の節を交え、処々二重刃、ほつれる刃を交える。上部物打ち付近は焼幅広めて小互の目を交えて横手で大互の目を焼く。 中心:磨上げ、無銘。茎目釘孔参個、鑢目は勝手下がり、刃上がり浅い栗尻、棟肉平。 帽子:大峰。横手で大互の目をやいて焼高く・一枚風になる。 阿波国では室町時代の戦国期、海部川のほとりに六十数人の刀工が活躍したと伝えられている。海部城主は自らも鍛刀し水軍の実需に応えたという。同派の作風は大和色が看取されながらも薩摩の波平一門との交流を窺う綾杉風の地鉄を呈するものがある。銘鑑によると「藤」「師久」「氏吉」「泰吉」「泰長」「氏重」「泰行」らの刀工が記録されている。 阿波海部刀の中で最も世に知られているものは三好長慶重代旧蔵・黒田家伝来の名物 『岩切海部』、刀 銘 阿州氏吉作がある。数度の戦で功名をあらわした業物として旧来より知られ『享保名物帳』に所載されている。 本作は無銘ながらも昨今の鑑定で個銘『海部氏吉』に極められた。大和伝を踏襲する柾目の鍛肌を基調に綾杉ごころの肌を交え、さらには一枚鋩子の特徴は同派の作域を顕している。桃山時代に流布した勇壮な体躯は、戦国武士の婆娑羅の気風と実利の好尚に乗った典型作である。上質の時代打刀拵が附されて保存状態も良好。内外ともに健全で幕政時代を通じて現代まで温存された秀品である。 附)黒蝋色塗鞘打刀拵(拵全体写真・刀装具詳細写真)
参考文献: 本間薫山・石井昌國『日本刀銘鑑』雄山閣、昭和五十年 |
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