S30028(S2074) 刀 銘 雲州住貞永作之 平成五年五月日 附)黒石目地塗腰刻鞘肥後打刀拵 |
島根県指定無形文化財保持者 |
現代刀 (平成五年/1993) 島根県 刃長 74.0cm 反り 1.8cm 元幅 33.5mm 先幅 24.4mm 元重 6.2mm |
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剣形:鎬造り、庵棟。寸延びて身幅広く重ね薄めに平肉つかず、元先の幅差目立たずやや浅めの反りがつき中峰に結ぶ。(刀身拡大写真) 地鉄:小板目肌よく詰み地沸微塵について鉄色冴える。 刃文:小沸出来の大房丁子は焼刃高く、匂口締まりごころの刃縁には小沸よくついて明るく冴える。刃中匂い深く充満し丁子足が刃先に向かって頻りに放射する。砂流しが丁子足を横切ってさかんにかかるなど焼入れの働きが豊かで抑揚ある刃文をしている。 帽子:横手下で焼き込んで直ぐに中丸となる。 茎:生ぶ。鑢目は勝手下がり。刃上がり茎尻、目釘孔一個。佩表の鎬地に『雲州住貞永作之』、裏には『平成五年五月日』の年紀がある。 刀匠『雲州貞永』、小林力夫は『貞善』、小林大四郎の三男として昭和23年に生れた。長兄の貞照、次兄の貞法に倣い作刀に専念すべく昭和42年小林日本刀鍛錬場に入門。同47年、文化庁より美術刀剣製作承認を受けた。 翌48年の新作名刀展の初出品にて入選以降、寒山賞、努力賞二、入選十三回を受賞するなど精力的な活動を続けている。平成11年4月9日、兄『貞法』とともに島根県指定無形文化財に認定された。 小林兄弟は、日本で唯一、たたら製鉄が操業されている奥出雲町在住で、父、大四郎氏のもとで幼少の頃から作刀に関わってきた。両氏は、たたら製鉄により造られた鋼の中でも、特に良質な玉鋼の選択に長け、鋼の脱炭・吸炭の処理技術にも抜きん出ている。厳選された玉鋼を用いた鍛錬では「まくり鍛え」という軟らかい鉄を硬い鉄で包む鍛錬方法に熟練した伝統工芸師である。 作風は丁字刃の備前伝を得意とし、奥出雲町横田にある「奥出雲たたらと刀剣館」で作刀の実演を行いその技術の公開と伝承にも努められている。 黒石目地塗腰刻鞘肥後打刀拵(全体写真・各部拡大写真) 大粒の白鮫を着せた柄下地は中程ややを絞って立鼓状と、妙味ある構成線を作り出して手に馴染む。目貫は秋草図、鉄地仕立ての縁頭・鞘鐺と鐔は同作の桜花桐唐草を充て、黒色糸を諸捻巻きで引き締めている。 この刀は常に比して寸が延び、身幅が広い。鎬筋の重ねは薄く平肉が付かず、棒樋を施して重量を減じて業物としての貫禄十分な造り込みとし、鞘を払って955グラムに調整された絶妙の重量配分をしている。打ち卸しの原姿を留めた健全な体躯を保ち、居合い・抜刀等には未使用で保存状態がよい。 銀無垢一重はばき、白鞘付属 *「奥出雲たたらと刀剣館」では平成27年4月より貞永氏による作刀実演は一時中断しております。 *『貞法』小林貞俊氏は昭和16年11月11日生れ、昭和30年 小林日本刀鍛錬場入門、同45年 文化庁より美術刀剣製作承認を受ける。平成4年5月1日、横田町指定無形文化財認定、平成11年4月9日、島根県指定無形文化財認定。 |
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