H87608(T6265) 短刀 銘 備前国住長船清光作 天文廿四年八月吉日
附)桐紋散総金具銀地刷毛文合口短刀拵
特別保存刀剣
古刀 室町時代末期(天文二十四年/1555) 備前
刃長23.5cm 無反り 元幅24.4mm 元厚7.1mm
剣形:平造り、庵棟、身幅尋常。ふくら枯れて元重ね厚く、先の重ねが薄くなる鋭利な体躯は、所詮鎧通しの造り込みをしている。(刀身拡大写真
鍛肌:板目肌が肌たち、大杢目が連なりここに帯状の映りがたち暗帯部を挟んで刃寄りは流れる柾目状の鍛肌に地景はいる強靭な鍛肌。
刃文:沸主調の直刃は僅かに湾れごころとなり、ほつれ、二重刃、小乱れ、小足を交えて刃縁に小沸が厚く絡み、刃中は匂口深く霞んで古雅な焼刃をしている。
帽子:切先の焼刃強く掃きかけて火炎風となり小丸に返り深く焼き下げる。
中心:生ぶ。鑢目は勝手下がり。棟肉平。目釘孔二個。刃上がり栗尻張る。履表の上方の棟よりには、大振りの長銘『備前国住長船清光作』、裏には一字分下がって『天文廿四年八月吉日』の年紀がある。
 戦国末期、備前長船の諸鍛冶は諸国の豪族や戦国大名からの注文を一手に集めてその求めに柔軟に応じて、頃合の打刀や短刀の製作が多い時代であった。
 長船清光は勝光・忠光らと並び『末備前』と呼称される室町末期の備前鍛冶を代表する名流として知られている。五郎左衛門尉と孫右衛門尉の両者は高名であり、ほかに『左衛門尉』、『与三衛門尉』、『源五郎』などの俗名のある清光がいる。俗名のない作刀も多々あり、特に天文年紀のものに優れた作品を観ることができる。
 同派は守護大名赤松氏との繋がりが密接で、注文打や入念作には武用を重視した作刀を踏まえながらも、神仏への祈念や覇気溢れる美意識を感じさせるものが多い。同時代長船の作品中、清光は忠光と並んで直刃の作を得意としているが、清光の作品には彫物が極めて少ないのが特徴である。ほかにも湾れ、湾れに互の目交じり、互の目や皆焼など、赤松氏や家臣の好みに柔軟に応じて様々な刃文を焼くものがあり多才な一門である。
 本作は清光の一作風を明示する短刀。銘振りの特徴から『五郎左衛門尉清光』の作と鑑せられる。所謂『鎧通し』と呼ばれる無反りの短刀は、元重ねが頗る厚い頑強な造り込みながらも先重ねを減じてフクラを枯らした鋭利な造り込みをしている。板目主調の強靭な地鉄には他の備前鍛冶に比して地沸が強く所詮『沸映り』が看取できる。
 同工得意の直刃を焼いて、総体に穏やかな作域にも覇気があり尚武の気風に満ちて調和しており、茎仕立ても丁寧。勝手下がりの鑢目も完存鮮明で錆味も絶妙。尚武の気風を今に伝える『五郎左衛門尉清光』の遺作典型の優品で、所持名こそないものの名のある戦国武士の具えに相応しい。

 附帯の桐紋散総金具銀地刷毛文合口短刀拵は金具師の至高の技を魅せた完存の優品(拵全体写真刀装具写真
  • 総金具銀地、桐紋散図、無銘
  • 銀地花菱紋飾目釘
銀無垢はばき、白鞘入り
 
短刀 銘 備前国住長船清光作 天文廿四年八月吉日
短刀 銘 備前国住長船清光作 天文廿四年八月吉日
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