C16080(T3190) 短刀 銘 兼房 附)黒漆皺革包鞘小さ刀拵 白鞘(本阿弥日洲氏鞘書) |
保存刀剣 甲種特別貴重刀剣 |
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古刀 室町時代末期 (永禄頃/1558~) 美濃 刃長 29.5cm 反り 0.3cm 元幅 26.8mm 厚 6.1mm |
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剣形:平造り、庵棟。身幅広く、寸延びて僅かに先反りがつき、ふくら張る大振りな短刀。(刀身拡大写真) 彫物:表裏には茎に掻き流した二筋樋の彫物がある。 鍛肌:地鉄やや黒く沈み、板目に杢目を交じえ、処々流れて白け映りがたつ。 刃文:匂口締まりごころの大乱れは表裏の刃文がよく揃う。元はごく短く焼きだして互の目を焼いて僅かに飛び焼きがあり湾れ、やや逆がかった複式の丁子刃は箱がかり耳形状となる。刃中は匂い充満して葉浮かび、互の目・丁子の足が入り砂流しがかかる。 帽子:焼刃高く湾れ地蔵風となり深く返る。 茎:生ぶ、目釘孔壱個。栗尻張る。檜垣の鑢目、棟肉は平で大筋違の鑢目がある。目釘孔下方中央に大振りの二字銘『兼房』がある。 兼房は室町期の美濃物にあって関七流中の善定派に属して名高い。特に『兼房乱』と呼称される腰が括れた丁子刃文を創出して高名である。『日本刀銘鑑』によると、もっとも古い作例として『兼重の子、永享(1429-)頃』、『兼常門、嘉吉(1441-)頃』とある。年紀作としては文明元年紀より始まり、この作品を事実上の初代としている。 文明十二年・十四年紀の兼房を二代、『校正古刀銘鑑』に記述されている大永七年紀の石見守清左衛門兼房を三代とし、永禄頃(1558-69)を四代、永禄・天正頃(1558-91)頃を五代と分類がなされている。 同時代の兼房作品中には同工が最も得意とした『兼房乱』を焼くものが多く、ほかの関鍛冶たちも兼房に範をとったものがある。また宗家以外にも兼房を名乗る刀工は神戸(安八郡神戸町)に住したものや、犬山城下で作刀したものがある。三代石見守清左衛門兼房の三男「河村京三郎」は天文三年(1534)、岐阜にて生まれ、後『若狭守氏房』と名乗り、尾張国清洲の城主、織田信長に仕えて抱鍛冶となっている。 この短刀は兼房の室町時代末期頃の作刀で打刀の添指として用いられたのであろう。戦国時代末期の婆娑羅の機運に合致した野趣に富んだ作風は迫力がある。同工兼房が南北朝期の相州物、さながら長義あたりに私淑した佳作である。昭和三十七年(1962)には人間国宝、本阿弥日洲の研磨が施されて同氏の鞘書がある『美濃國兼房 佳作也 長サ九寸六分有之 昭和壬寅歳 木染月 上院誌之 本阿弥日洲(花押)』 附)黒漆皺革包鞘小さ刀拵(拵全体写真・刀装具各部写真)
参考文献: 鈴木卓夫、杉浦良幸『室町期美濃刀工の研究』里文出版 平成18年 |
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