H1903(S2100)

刀 銘 備州長船法光 享禄二年八月日

古刀 室町時代後期(享禄二年/1529) 備前
刃長 69.1cm 反り 2.6cm 元幅 30.0mm 先幅 18.7mm 元厚 7.0mm

保存刀剣鑑定書

剣形:鎬造、庵棟。尋常な元幅に弐尺弐寸七分強のやや長めの刃長を有し、元身幅開く、踏ん張りがついて腰元で反り、元先の幅差がついて併せて先反りがついて中峰に結ぶ。(刀身拡大写真) 鍛肌:板目に杢交え肌目たち湯走り状の乱れ映りが鮮明に立つ。 刃紋:僅かに焼きだして、小沸主調の腰開きの互の目に背の高い丁子・尖り刃を交えて刃中は匂い深く充満して葉が浮かび、乱れの谷には砂流し頻りとかかる。僅かに跳び焼きかかり丁子の焼頭からは沸が湯走り状に放射して乱れ映り艶やかに総体出入りのある賑やかな刃文となる。
帽子:焼きの高い互の目のまま乱れ込み返り深い。
茎:生ぶ、目釘孔一個。鑢目勝手下がり、棟肉平。刃上がり栗尻が張る。目釘孔の下方鎬筋上にはやや小振りの長銘『備州長船法光』、裏には『享禄二年八月日』の年紀がある。

 法光は勝光・清光らと並び「末備前」もしくは「永正備前」と呼称される室町時代後期の備前鍛冶の中では作例が比較少ないものの、与三左衛門尉祐定や次郎左衛門尉勝光に双璧をなす技倆を示しているものに、『新左衛門尉』や『四郎左衛門尉』を冠する法光がいる。法光は優秀品といえども俗名をきらないものがあり、則光・祐光らと同一歩調とみることが出来よう。
 本作は頃合いの寸法に腰反り高くついた素早い抜刀に好適な姿。鎬高く棟に向かい鎬地をやや削いだ強固な肉置きは室町期の打刀の典型である。俗名こそ添えられていないものの、硬軟の鋼が織りなすよく錬れた板目肌には地斑調に厚くついて乱れ映りが鮮明にたち、変化に富んだ賑やかな刃文を有し、地刃ともに豊かな働きが愉しめる秀作。
銀着せ一重はばき、白鞘入
参考文献:
『長船町史 刀剣編図録』 長船町 平成十年
藤代義雄・藤代松雄『日本刀工辞典』藤代商店 昭和五十年
本間薫山・石井昌國『日本刀銘鑑』雄山閣、昭和五十年
注)中世末期、所謂室町時代中後期の打刀の体躯の特徴に、永正・大永(1504~27)頃は二尺~二尺一寸くらいの、寸法がつまって、片手打刀恰好のややズングリした姿が主体であり、これが享禄・天文(1528~40)頃になると刃長が二尺二寸台位に延びて、やや身幅が広く中峰延びごころの姿が多くなる。さらに時代が下り、元亀・天正(1570~91)頃の室町時代最末期になると寸法は二尺三寸以上、身幅広く、元先の幅差があまり開かずに、大峰に結び、茎の寸法も片手打ちから両手打ちへと移行する傾向が窺われ、上半には先反りの付いた頑健な打刀姿に変貌していく。