T151168(W2778)

短刀 銘 兼幸作 壬寅年八月日

現代刀 (令和四年/2022) 熊本県
刃長 26.9cm 反り 0.2cm 元幅 31.1mm 元重 6.4mm

 

剣形:平造り、庵棟。重ね厚くついて身幅広く、ふくら張る。(刀身拡大写真
彫物:表の腰元櫃内には火炎不動明王尊の浮彫、裏には羂索内に不動明王の梵字下方には蓮台の彫物がある。
鍛肌:小板目肌よく錬れて詰み、地沸厚く付いて地景入り潤う強い鍛肌。
刃紋:沸出来広直調の焼刃の刃縁には小乱れやほつれる刃を交えて匂口明るい。
帽子:先掃きかけて中丸に返る。
中心:生ぶ茎。刃長に比してやや短めの舟底風の茎は大筋違の鑢目。僅かに反りがつき刃上がり栗尻に結ぶ。、棟小肉ついて此所にも大筋違の鑢目がある。大きく穿つ目くぎ穴一個。指表目釘孔下方やや棟寄りに『兼幸作』の三字銘、裏の棟寄りには『壬寅年八月日』の制作年紀がある。

 赤松太郎一門は肥後人吉藩主相良氏の御用を務めた代々続く由緒ある刀匠一家。明治以降『兼幸』の祖父『兼重』の代から刀匠として活躍し、熊本八代の『木村日本美術刀剣赤松太郎鍛錬場』にて鍛刀を続けている。同派は川内川で砂鉄を採取し、自家製鉄によって玉鋼を精製する鉄への強い拘りを堅持していることで知られ、『以川内川砂鉄鍛之』などの添銘のある作刀がある。
 表題の作者『赤松太郎兼幸』(木村安宏)は、昭和五十六年(1981)『赤松太郎兼嗣』(木村兼定)の次男として生まれ、平成15年(2003)より父である師『兼嗣』に入門して作刀をはじめ現在にいたる。
 この短刀は令和四年八月制作年紀の新作。自家で精練した玉鋼を用いた鍛練は通常慧眼する新作刀地鉄とは肌の様相を異とし、異なる性質の炭素鋼から成る地景は煌めく地沸を縫って縦横に織りなす強靭な鍛肌となり、焼刃の刃縁に積もる清涼な沸は銀色に明るく冴える。不動明王は右手に煩悩を断ちきるための宝剣を持ち、左手に持つ羂索は恐ろしい魔物を縛り上げたり時には苦しむ衆生を救い上げるという。
銀無垢一重はばき、白鞘入

栗原昭秀
木村兼重(昭和十七年昭秀に入門)
長男 赤松太郎兼嗣(木村兼定)―――――――長男 赤松太郎光宏(木村光宏)
昭和二十六年生                  (昭和五十四年生)
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次男 赤松太郎兼照(木村兼弘)       次男 赤松太郎兼幸(木村安宏)
昭和三十二年生(昭和六十三年より作刀)   (昭和五十六年生)
三男 赤松太郎兼裕(木村 馨)
昭和三十六年生(昭和五十六年より作刀)