Tuba2885a

杜若透図鐔

無銘 古正阿弥

丸形、鉄地、肉彫地透、金象眼、角耳小肉、両櫃孔(片櫃水銀埋)

縦 73.3mm 横 72.5mm 重ね 5.0mm(耳) 5.4mm(切羽台)

特別保存刀装具鑑定書

 丸形の鉄槌目地を地透、そよ風が清々しく吹き渡り揺らめく『杜若』を配している。大きく張った小判形の切羽台とその左右に配された丸く幅広の両櫃孔は重量感と落ち着きがある。僅かに肉彫りされた杜若は陰陽の布目金象眼、やや幅広で小肉のついた角耳には小粒の鉄骨が現れている。鉄味は時代の上がる感があり古色溢れ優美な図柄を配して桃山時代の装飾芸術の所産を醸し出している。

 愛知県刈谷市の最北部にある日本三大カキツバタ自生地の一つ「小堤西池のカキツバタ群落」。5月中旬には緑一面の湿地に清楚な青紫色の花を咲かせる。昭和13年に国の天然記念物に指定されている。

 正阿弥は刀剣の本阿弥、能楽の世阿弥、絵画の能阿弥と列んで金工家として足利将軍家に仕えた権威のある家柄。後藤家、梅忠家と共に金工界の三代派の一角として確固たる地歩を築いておおよそ五百年の永きにわたって伝統を守り江戸時代各城下町で栄えた一門。桃山時代以前の作品を古正阿弥と称して特に賞美されている。

桃山時代