Tuba2825a

編目文図鐔 信玄

無銘 信玄

丸形、鉄三枚仕立地、真鍮・赤銅針金編込、真鍮縄目覆輪、両櫃真鍮内覆輪鉛埋
縦 85.3mm 横 85.3mm 重ね 5.0mm(切羽台) 6.5mm(最大)

特別保存刀装具鑑定書

 信玄鐔とは鉄下地に真鍮や山銅の細い針金を巻いたり、籠のように編み上げたりしたものや、やや太めの針金を百足が這ったように象嵌したものがある。『信玄』の由来は信玄袋や籠信玄の構造が似ていることからの呼称という。
 武田信玄の好みによって作られたとも云われているが真偽のほどは定かではない。信玄鍔の古作は甲冑師系の大振りな木瓜形の鉄地に菊の透かしのある豪放なものがあるが作品は稀有であり、中世室町期のものとみられる信玄鍔の作品が武田信玄の菩提寺である山梨県甲州市の『恵林寺』の (財)信玄公宝物館に数点ほど保存されている。
 この鐔はよく鍛練された中低の鉄三枚仕立の下地に真鍮と赤銅針金で精緻に編み込んで象徴的な円相図を顕している。耳には螺旋状の真鍮覆輪を充て、両櫃孔には真鍮の内覆輪を施して鉛埋、腕抜孔細く穿かれている。
 大振りで肉置き薄肉仕立ての鉄地の鍛え頗るよろしく、大きな櫃孔に螺旋覆輪は如何にも豪放な造り込み。極細の真鍮・赤銅の針糸で精緻で編み上げて円相形を顕して悟りや真理、仏性、宇宙全体などをで象徴的に表現している。