Tuba2402a

網代楓透鐔

銘 埋忠 彦右衛

竪丸形 鉄地 肉彫地透 金銀露象嵌 残土手耳

縦 80.9cm 横 75.1mm 重ね 4.2mm(耳) 4.1mm(切羽台)

保存刀装具鑑定書

 桃山時代の京都に端を発した埋忠一門は桃山時代から江戸時代にかけて活躍した。刀剣および刀身彫刻、鐔などの製作に長じ、名刀の磨上、仕立て直し・金象眼の嵌入および鎺の製作まで幅広い活動をした一門である。

 埋忠家系図および『刀装金工辞典』に拠れば、京都西陣の埋忠 彦右衛(門)は『重長』同人、『明寿』の甥で父の『明真』(彦左衛門)は明寿の弟という。慶長二年八月日埋忠重長と銘した刀押形が埋忠押形にある。

 晩年は『寿斉』と号し、本阿弥家と協同で名刀の磨上げや金象眼の嵌入や鎺製作および、『埋忠寿斉』と刻した鐔がある。名物『塩川来国光』、名物『毛利藤四郎吉光』には『うめた々寿斉』と針書銘のある鎺が現存している。

 この鐔はやや薄手の抑揚ある鍛目地を竪丸に仕立て、晩秋の庭園の楓から朝露の落葉が竹垣に舞う様を表現した。京の最先端の美観を鐔に追究した本作は簡素ながらも洗練味が窺える。埋忠嫡流の希少な在銘品である。