Tuba2779a

蓑亀図鐔

銘  埋忠 橘宗義

丸形 鉄鍛目地 象嵌 角耳小肉 両櫃孔

縦 79.1mm 横 78.7mm 重ね 4.1mm(耳) 4.9mm(切羽台)

特別保存刀装具鑑定書

 埋忠宗義、名を数馬助という。巨匠埋忠明寿の嫡流で、『埋忠明寿孫数馬助橘宗義』と刻した脇指がある。また大坂歴史博物館所蔵の『埋忠数馬助 橘宗義 寛文三癸卯歳 行年六十二』と刻する鐔は年紀と年齢が刻されておりり好資料である。『数馬助埋忠』は延宝年間の『難波鶴』ほかの大坂案内記に散見される『刀脇指きづなをし』『つば』を生業とした鎗屋町の『埋忠数馬』を指すのであろう。

 この鐔は抑揚ある鍛目地に鉄を鍛え碁石形に造りこみ、切羽台を亀甲に見立てその周囲に隠れ蓑を毛彫りで配している。蓑亀は櫃孔よりひょっこりと前足と長首を出す瑞祥の印。蓑亀は甲羅から本体より長い髭のように藻が繁茂する長寿吉祥の証として古来より珍重されてきた。江戸時代初期、京の最先端の美観を鐔に追究した本作は簡素ながらも洗練味が窺える。京埋忠嫡流の希少な在銘品である。