Tuba2784a

四方定紋花鳥図鐔

無銘 応仁鐔

丸形、鉄地、鎚目地、真鍮象嵌、角耳小肉、片櫃孔

縦 71.2mm 横 70.6mm 3.6mm(切羽台)


応仁鐔は室町時代、応仁の頃(1460~)から京都を中心として製作されたことからの呼称。刀匠鐔に通ずる槌目仕立ての鉄地に真鍮を線と点による象嵌の手法で文様を施して甲冑師鐔や刀匠鐔には観られない美観を具えている。刀匠・甲冑師鐔に比してやや小振りで切羽台や櫃孔、耳を線や点で縁取したものや、定紋に唐草などを図案風に高肉彫りして真鍮象嵌を嵌めこむ手法を用い、これらの象嵌は地肌より高く浮き上がっており重厚感がある。単なる鉄板鐔ではなく美観を供え技巧を施して当時非常に高価であった大陸からの輸入品の真鍮を用いた高級品であった。この技法は絵画的に深化した平安城象嵌鐔に継承されている。

この鐔は薄手にして、真鍮線象嵌を施した大きな切羽台の周りに定紋・花鳥に雁を散らした古調な意匠。漆黒槌目地の鉄地は古雅があり、耳には鉄骨が顕れている。乱世の作品であり古式な技倆に無骨さが感じ取られる。後世の平安城象嵌鐔や与四郎鐔に観られるような土手耳や打ち返し耳、耳際に観られる精巧な細工は観られない。真鍮据文高象嵌部に量感があり、時代のあがる古雅な鐔である。