Tuba2726a

蜃気楼に唐草透鐔

無銘 南蛮

隅切木瓜形、鉄地、地透、金銀布目象嵌、透残角耳、両櫃孔

縦 78.0mm 横 73.0mm 4.0mm(切羽台)

保存刀装具鑑定書

 南蛮鐔とはポルトガル人が天文十二年(1543)に鉄砲を日本に伝えてからの呼称。南蛮人もしくは韃靼人が佩用した刀剣に付随した鐔がその珍しさから珍重されたことに由来している。異国情緒溢れる南蛮鐔は渡来品ばかりでなく、平戸の国重一派や肥前の若芝一門等が改良を加えて製作しお洒落指し打刀や脇指の腰元を飾った。

 この鐔は打刀に附帯したものであろう。常に比して大振りで独特の切羽台形状をしている。鉄味よろしく唐草を肉彫りし、貝殻蜃気楼と瑞雲、鋤残し土手耳部分を金平象嵌して異国趣味溢れる。渡来品を珍重した嗜好者を魅了した洒落た南蛮鐔である。