Tuba2720a

傘笠に飛燕図鐔

銘 

丸形、碁石形、鉄地、砂張象嵌、角耳、片櫃孔

縦 75.7mm 横 76.0mm 4.3mm (切羽台)

特別保存刀装具鑑定書

戦国時代、近江国友村は火縄銃の生産地として栄えた。幕府による火縄銃の製造が規制されその技術と伝法は鐔の装飾表現へと応用されるようになった。国友鉄砲鍛冶らの特長は『砂張』と呼ばれる錫や鉛の合金を銃身に象嵌するところにあり、国友村の鉄砲鍛冶らは泰平の世になると各地に職を求めた。伊勢亀山に移住した『間』姓を名乗る工人たちは砂張象嵌の技法を鉄鐔に採り入れて鐔・縁頭などを製作した。

この鐔はこの鐔は碁石丸形に造り込んだ渋い光沢を放つ小板目鍛の鉄地表に太い竹組の番傘と笠を配して陽射し・雨雪を防ぎ・降り注ぐ困難から身を守る厄除けの意を表し、裏は春になると毎年道を違わずに渡来する渡り鳥の夫婦燕を配して旅の安全を祈願している。画題を線画で彫り込んで、溶融した鉛・錫の合金を彫り込んだ文様に流し込んで冷却固化・収縮する過程で生じた小泡孔や大小の空隙が各所に現れた砂張技法は陰陽複雑に影響し個性豊かな美的空間を創出している。象嵌された砂張は表面が磨かれ地鉄の肌合いと調和し長い年月による古雅な風合いは渋い光沢を放つ古雅な美観。この鐔のように意図して表裏の画題や意匠を違えることがあり独特の作風を遺している。通常は無銘もしくは集団姓の『間』を刻することが多い。『間』は近江国蒲生郡にある地名であろうというがさだかではない。一門には出身地の国友を冠して『国友貞栄』や『国友正栄』などと個銘を刻した長銘の作品もある。伊勢国亀山住。