T151168(W2778)

寸延び短刀 銘 備州長船次光 正長二年八月日

古刀 室町時代初期(正長二年/1429) 備前
刃長 34.2cm 無反り 元幅 25.1mm 元重 5.5mm

特別保存刀剣鑑定書

10回まで無金利分割払い(60回まで)

剣形:平造り、庵棟。尋常な身幅に比して寸が延び、ほぼ無反り。ふくらやや枯れごころの室町時代初期に流布した平造り寸延び短刀の典型。(刀身拡大写真
鍛肌:杢目に板目交えてよく錬れて潤い美麗な鍛肌。棟寄りには地斑調の棒映りが淡くたつ。
刃紋:小沸本位の直調の焼刃は浅く湾れて小乱れ交え、逆がかった小足僅かに入り、節ごころを交えて匂口が明るい。
帽子:先が尖り気味に突き上げて浅く返る。
中心:生ぶ茎。刃長に比してやや短めの茎には僅かに反りがある。鑢目勝手下がり、棟肉平でここにも勝手下がりの鑢目がある。先栗尻。目くぎ穴一個。指表中央に長銘『備州長船次光』、裏には『正長二年八月日』の年紀がある。

 銘鑑によると『長船次光』は應永後半から正長にかけての年紀作がある。『次光』は『重久』の子と伝え、『秀光』の孫にあたる『應永備前』の一人。
 『應永備前』とは、この期の備前刀鍛治が應永年紀を切ることから生まれた呼称。長船鍛冶らは先代の南北朝時代に流布した奢侈で派手な婆娑羅の機運が熟した豪壮な体躯と異なり、国家安泰の機運に呼応した復古的な作域を示すようになる。
 応永備前の平造りの脇指や寸延び短刀には、南北朝時代の作品に比較すると身幅頃合にさらに長寸となるものがみられるようになる。太刀の添指として具えたのであろう、長めの刃長に比して短めの茎をもつ特徴は同時代に流布した帯用様式を明示している。『應永備前』の作域は腰開きの互の目乱れに丁子を交えた賑やかな作風と青江に念頭をおいた直刃の穏健な出来口がある。本作のごとく『応永杢』と呼ばれる美麗な杢目を交えた潤いある鍛肌は、乱刃を焼く際と相違して鍛肌さらに精美に錬れて潤い、刃縁より暗帯部のある地斑調の棒映りを伴い見事である。
 六百年の歴史を刻む生ぶ茎は至高の錆味を有して、鏨跡鮮やかな長銘『備州長船次光』および裏の制作年紀『正長二年八月日』は双方ともに凛として明瞭である。『應永備前』の地・刃・茎ともに健全なる体躯を有した優品である。

金着二重はばき、白鞘入
参考文献:本間薫山・石井昌國『日本刀銘鑑』雄山閣、昭和五十年