H59919(W2888)

寸延短刀 銘 金房兵衛尉政次

古刀 室町時代末期(天文頃/1532~) 大和
刃長 31.6cm 無反り 元幅 26.9mm 元重 5.6mm

保存刀剣鑑定書

剣形:平造寸延短刀、三つ棟。寸延びて身幅が広く、ふくらが張る室町時代末期の典型姿をしている。裁断の実利を念頭に於いた重ねの薄い造り込み。(刀身拡大写真
鍛肌:板目肌に杢交えて刃寄り柾がかり、霞がかった妖艶な地映りがたつ。
刃文:小匂主調の中直刃にはほつれる刃、二重刃を交えて節ごころ小互の目がある。刃中は柔らかな匂いを敷いて、葉が浮かび、錵筋がかかる。
帽子:表の鋩子は湾れて火炎となり返り深く返る。裏は掃きかけごころの錵が厚くついて返りは固く留まる。
茎:生ぶ、栗尻。目釘孔壱個。大筋違の鑢目。大きく穿かれた目釘孔下方、棟寄りには大振りの長銘『金房兵衛尉政次』がある。

 金房兵衛尉政次は大和金房派の棟梁格で天文から天正頃(1532~91)に初・二代があるという。同派は手掻の末葉と伝えられ、戦国末期の南都奈良の僧兵の求めに応じて幾多の業物を鍛えた。
 金房兵衛尉政次は大和国の守護であった興福寺の別院、宝蔵院の御用を勤め、興福寺の僧兵で、宝蔵院流槍術を創始した『胤栄』(いんえい)の十文字槍の製作者として名高い。『胤栄』の名は宮本武蔵の小説にも登場している。
 金房一門の作品は、黒田節にでてくる名物の大身槍『日本号』、或いは本多忠勝所持の『蜻蛉切』(銘 藤原正真)と称される名槍などの製作者として名高い。槍・薙刀の作品が多く、刀・脇指がこれにつづき、短刀の作例は稀有である。
 この寸延短刀は、太刀や打刀の添指として裁断の実利を念頭に製作されたものであろう。幕政時代には金・銀を配した特注上質の二重はばきで化粧されて温存された。刃区・棟区ともに凛として深く、ふくらの張った健全な体躯を保持した佳品である。
時代二重はばき(上貝金着・下貝銀着)、白鞘入
参考資料:本間薫山・石井昌國『日本刀銘鑑』雄山閣 昭和五十年
注) 現代の刀剣類登録制度の規定により、登録証と鑑定証には『脇指』と記載されています