A75715(W8241)

脇指 銘 多々良氏長幸 於摂津國作之 附)黒笛巻漆塗鞘肥後脇指拵

新刀 江戸時代前期(貞享頃/1684~) 摂津
刃長53.9cm 反り1.7cm 元幅30.1mm 元重7.5mm 先幅19.8mm

特別保存刀剣鑑定書

附)黒笛巻漆塗鞘肥後脇指拵

保存刀装具鑑定書(鐔)保存刀装具鑑定書(小柄)

 

剣形:鎬造り、庵棟。重ねが厚く身幅広く、元先の幅差目立たずやや深めの反りがつき中峰に結ぶ。(刀身拡大写真
地鉄:地鉄小板目よくつみ、処々板目肌、流れ肌が肌立ちごころに交じり、地沸微塵に厚くつき、地景細やかに入り、乱れ映りたつ。
刃文:丁子乱れ、処々尖り刃、複式風の互の目交じり、総じて焼き高く、足・葉入る。匂い口やや締まり小沸出来、処々匂い勝ちとなり、細かに砂流しかかり、匂い口明るい。
帽子:焼き深く乱れ込み、先尖りやや長く返る。
茎:生ぶ。先栗尻。鑢目勝手下がり、目釘孔壱。指表棟寄りに長銘『多々良氏長幸』、裏には半字分下げて『於摂津國作之』の駐槌地の切付がある。
 多々良長幸は通称を多々良四郎兵衛と称し、本国は紀州という。紀州より大坂に移住した石堂派の河内守康永の門に学び、師に優る技量の持ち主として上々作に列位する新刀備前伝の第一人者である。同工の現存する年紀作は稀有であるが、僅かに天和・貞享のものがみられることからおおよその活躍期を知ることができる。山田浅右衛門による『懐宝剣尺(かいほうけんじゃく)』において、斬れ味最高とされる最上大業物に分類されている。
 彼の作風には石堂派本来のお家芸を明示するものが多い。大丁子に小丁子・尖り刃が交じり足・葉などがよく入った一文字を狙ったものがあり、他方は腰の開いた互の目を主調に複式風の刃を交えた末備前の所謂、次郎左衛門尉勝光や与三左衛門祐定に範をとった華やかな作柄がある。
 この脇指は小板目肌がよくつんで地沸が微塵によくつき、地景が細やかに入った精美な鍛肌に乱れ映りがたつ。刃文は匂口締まって明るく、一文字風の華麗な丁子乱れを焼く。また丁子乱れのなかに尖り刃や複式の互の目を交え鋩子も乱れ込んで先尖りやや長く返るなど同工の特色ある作風を明示しており見所も豊富な典型作。
 身幅が広く元先の幅差はさまに開かずに物打ち張って、やや寸が詰まり平肉がつき先反りごころの体躯に茎の総長が短い。次郎左衛門尉勝光の片手打ちの打刀に範を採ったものであろう。殊に剛健な肉置きと刃縁の冴えと美麗な乱れ映り、壮観に丁子乱れを焼上げて美的に昇華した同工屈指の名品といえる。

附)黒笛巻漆塗鞘肥後脇指拵  (拵全体写真拵各部拡大写真

  • 縁頭:小桜散図 無銘 鉄地 金平象嵌 無銘
  • 目貫:仏神(広目天)図 赤銅容彫 色絵
  • 鐔:菊花唐草散図 真鍮地鋤下彫 据文象嵌色絵 無銘 梅忠(保存刀装具)
  • 小柄:獅子香炉図 赤銅魚子地 高彫 金色絵 無銘 京金具師(保存刀装具)
  • 小刀:銘 政常
  • 柄前:白鮫着 茶漆革菱巻

金着一重はばき、白鞘付属
時代研ぎのため僅かに錆があります