A74802(T3714)

短刀 銘 千手院(千手院盛国)

江戸時代前期 (寛文頃/1662~) 武州
刃長 28.3cm 反りなし 元幅 31.8mm 重ね 6.6mm

特別保存刀剣鑑定書

 

 

 

 

剣形:平造り、三つ棟。寸のびて身幅広く元重ね厚く、先の重ねも重厚な無反りの短刀。ふくらが張り大振りで重量がある豪壮な造り込み。(刀身拡大写真
鍛肌:板目肌よく錬れて総体に柾がかりやや肌目たつ。地沸微塵に厚くつき地景が細やかに入り、強い鍛肌を呈する。
刃文:直調に僅かに焼きだして小互の目を連ねて数珠状となり上に行くにしたがい刃幅広く、互の目も大模様となり沸さらに厚くつく。一部は地に溢れ湯走り・跳び焼き・棟焼きを形成した皆焼風。刃中は太い互の目の沸足が入り、刃縁には良質の沸微塵に積もり、ここに砂流し頻りにかかり、棟焼には金線・銀筋入り地刃ともに頗る明るく冴える。
帽子:大互の目を焼きこんで直ぐ調子に大丸となり先掃きかけて棟焼きに繋がる。
茎:生ぶ、目釘孔壱個。栗尻張る。大筋違の鑢目、棟小肉付いてここには大筋違と化粧の鑢目がある。佩表の目釘孔下方には特徴ある蓮書体風の鏨使いで三字銘『千手院』とある。
 徳川幕府のお膝元では古作相州伝に範を取った御紋康継をはじめ、繁慶、和泉守・上総守兼重、長曽根虎徹、千手院盛国、大和守安定らの相州伝鍛冶が権勢を振るった。
 千手院盛国は岡本氏、赤坂千手院の末葉で江戸に出府して和泉守兼重に師事した。初銘を『守正』、源姓を名乗り『和泉守』を任官。長曽根虎徹や上総守兼重とは同門で虎徹、兼重らとともに江戸新刀の双璧をなした。『和泉守千手院源守正作』、『和泉守千手院盛国作』などと銘をきり、『江戸千手院』と呼ばれ虎徹に迫る名作があることで高名な上作鍛冶である。
 表題の作刀は盛国稀有の平造り短刀の遺作。棟区深く、三つ棟の庵が高い剣形から大和色の特徴が顕著。柾目主調の鍛肌は千手院派の出自を明示している。小互の目を連ねる刃文は所詮、数珠刃と称される寛文頃の江戸新刀に隆盛した焼刃をして虎徹の地刃に肉薄する優作。刃縁に沸が頗る厚くついて湯走りかかり皆焼刃を形成し、勇壮なる剣形と相俟って迫力がある。
 同時代の江戸新刀の大部分は鎬造りで短刀を慧眼することは稀である。同工在銘作のほとんどが長銘であるのに対して本作の銘文は出自である『千手院』の三字銘を刻するにとどめ、『和泉守』の任官と『盛国』の個銘の双方を慎んでいることから特別注文の献上作であることを伺う優品である。
時代銅はばき、白鞘入り