A6608(S7854)

刀 無銘 寿命(新刀)

江戸時代前期(寛文頃・約350年前) 尾張
刃長69.9cm 反り2.0cm 重ね6.5mm 元幅30.1mm 先幅22.6mm

保存刀剣鑑定書

売却済

剣形:鎬造り、庵棟。二尺参寸の定寸法をしており、腰元でやや深めの反りが付く。元の身幅は広く、元先の身幅差さまで開かず、中峰延びごころの雄大な姿をしている。(刀身全体写真
鍛肌:板目鍛えの地鉄良く錬れて詰み、細かな地沸よくついて地鉄の鍛肌目に沿った微細な地景が湧いて躍動感に満ち、鉄色冴える。総体に潤いのある鍛肌をしている。
刃文:直ぐに焼きだして、匂口の冴えた互の目に尖りごころの刃、蟹の爪状となる複式刃をしている。互の目の焼頭から湯走りが地に突き入るように地沸が射して、刃中には小足入り、匂口明るく冴える。棟には処々棟焼きがある。物打ちより浅い湾れ刃となり、横手下で互の目を三つ焼いている。地刃ともに豊かな変化があり楽しめる。
帽子:表裏とも横手下で互の目を焼いて直調となり、先中丸。返り乱れ込んで深く焼き下げて棟焼きに繋がる。
中心:生ぶ、無銘。鑢目は浅い勝手下がり、茎尻は栗尻。目釘孔壱個。
 寿命は美濃国、関に天正八年に生まれた近藤助左衛門を始祖としている。尾張清洲城下鍛冶町に慶長年間に移住して「岩捲寿命」と銘した。寛永二年に丹後守を受領して名古屋城下に移り尾張徳川家の庇護を受け、以降幕末の五代まで江戸時代を通じて栄えた一門として知られる。元来より寿命(じゅみょう・としなが)は瑞祥銘で縁起がよいために珍重されてきた。
 表題の作は無銘ながら江戸新刀期の寿命と極められた。良質の地鉄を精緻に鍛えた強固な鍛肌をしており、手持ちはズシリと重厚な印象がある。尾張藩士の需によるものであろう、刀造りに専念して物打辺りは焼刃を鎮めて湾れを焼くなど尚武・実戦の厳しさを顕している。この刀は定寸法で頃合いの反りをしており素早い抜刀に好適である。掃表の刃中に鍛割跡が残るものの、上研ぎが施されて巧く補修されている。
銅二重はばき、白鞘入り