Tuba2718a

A boat Reeds and Tatsutagawa Maples in River Tsuba

signed : TEIEI 貞栄

Round shape, Iron ground, Polish surface, SAHARI (tin, lead alloy) inlay, Square Mimi edge, Both Hitsu-ana punches

81.4mm x 81.2mm x 4.3mm (Mimi)

NBTHK(Tokubetsu Hozon) certificate

戦国時代、近江国友村は火縄銃の生産地として栄えた。幕府による火縄銃の製造が規制されるに至り、その技術と伝法は鐔の装飾表現へと応用されるようになる。国友鉄砲鍛冶らの特長は『砂張』と呼ばれる錫や鉛の合金を銃身に象嵌するところにあり、貞栄は宝永年間に故郷の近江国友村を出て松平家に亀山で抱えられ、砂張象嵌の技法を鉄鐔に採り入れて鐔・縁頭などを製作した。以降その転封にしたがい山城、下総でも製作しており元禄・享保の年紀を添えたものがある。

この鐔は大きな真円形に造り込んだ渋い光沢を放つ鉄地の表に流水に揺らぐ芦に小舟を、裏には紅葉流れる竜田川の風雅な画題を線画で彫り込んで、溶融した鉛・錫などの合金を彫り込んだ文様に流し込んで冷却固化・収縮する過程で生じた小泡孔や大小の空隙が各所に現れている。砂張の技法は陰陽複雑に影響し個性豊かな美的空間を創出している。象嵌された砂張は表面が磨かれ地鉄の肌合いと調和し長い年月による酸化が醸し出す古雅な風合いが渋い光沢を放ち美観の要となっている。通常は集団姓の『間』を刻することが多いが、個銘『貞栄』を刻する作例は稀有であり、同工類品中でも殊の外大振りで典型の作域を明示している。